平成8年~17年 いざなみ景気に後押しされた平成の成長期 将来を見据えた設備投資と新たな挑戦

創業50周年記念誌出版記念会
創業50周年記念誌

『創業50周年記念誌』を作成し全社的な軌跡を改めて確認

創業50周年を翌年に控えた平成7年、「50周年記念誌」の社内編集プロジェクトを立ち上げ、OBへの聞き取り調査や古い記録、写真などのデータ収集を開始した。記念誌は記録を残すだけでなく、温故知新という言葉が示す通り、小楠金属のこれからを考える契機ともなり、古い軌跡を辿りなおすことで様々なビジョンや課題の発見につながった。同記念誌は当社における貴重な記憶遺産となっている。
また、記念誌編集と同時期に小楠金属のロゴマークを新しく制定。このロゴマークが今も小楠金属のシンボルとして様々な営業ツールやサイン類に活用されている。

自社ブランドの1号機「OCS」の開発

研削加工におけるスラッジ対策は多くの研削加工メーカーにとって大きな課題であった。2輪、船外機、各種機能部品の最終工程として多くの研削盤が稼働していた当社でも、濾過タンクの清掃による機械停止が生産工程でネックとなっていた。
当社は平成14年、革新的な研削盤用濾過システムを完成させた。2槽渦流型クーラントシステム「OCS」であった。「現場の困りごとを知恵を出して解決する」、当社が創業以来続けてきた改善活動、生産性向上活動の象徴といえる当システムは、研削くず除去にマグネットセパレータとサイクロン式砥粒除去装置の2段階分離法を採用、スラッジ除去率は格段に向上、作業者はタンクの清掃から解放されクーラント液の寿命も大幅に向上した。

のちに自社ブランド「OCS」として販売を開始。平成19年には「渦流循環型クーラント浄化装置」として特許を取得、平成27年にはサイクロンの省電力とクーラント液使用の効率化が評価され浜松市から「省エネトップランナー審査員特別賞」を受賞している。販売開始以来、当システムは好評を呼び、改良を重ね多数の研削加工メーカーに納入され今後の伸びが期待されている。

インド・サクティシュガー社への
技術援助と研修生受け入れ

平成に入ると、国内大手自動車メーカーが注力していたのは現地生産による海外戦略である。当社の主要取引先であるスズキ㈱も昭和61年、いち早くインドに進出、現地生産の拡大を図っていた。そんな時代の折、スズキ㈱海外技術部より依頼が舞い込むこととなる。南インド、コインバトールにある「サクティシュガー社」においてのステアリングナックル現地調達化のための加工技術指導であった。当社より現地へ技術者を派遺、技術的な打ち合わせから機械設置、品質保証、加工指導等、総合的な技術支援が始まった。機械や刃物、治具に至るまで日本製にこだわった。目指したのは日本と同じOGUSUの品質であった。単体専用機を13台設置、人がワークを運びながら加工するライン構成で、Uの字型の「人間トラマン方式」と呼ばれる手法を用いた。「初めての訪印で言語、気候、食べ物、生活習慣、どれをとっても戸惑いばかりです」当時の報告書には当社技術者の現地での奮闘が記されていた。

平成8年1月に着手したこの事業は翌9年2月にはOGUSUの品質で完成された「サクティ社製ステアリングナックル」をインド、マルチスズキ社へ納めることとなった。同時にサクティ社から技術研修生を受け入れ、技術教育をおこない現地での品質保証体制を確立した。以降、当社からの技術支援は継続的に続いている。サクティ社からマルチスズキ社へ納めた同製品はこの約20年間、不良ゼロで高い評価を受けている。のちにタイへ進出することとなる当社にとって、この経験と実績が大きな寄与となっている。

新ライン完成式にてOGUSUの加工方法を取り入れたステアリングナックルラインを確認するサクティシュガ一社、マニカム会長。

サクティシュガ一社で加工された
ステアリングナックルとブレーキディスク。

OGUSU-SERVERはいく度の改良を重ね現在もOPS(OGUSU Production System) の中核を担う

社内LANの構築でIT化を推進

平成9年、ITバブルによる投資高潮が世界市場をにぎわせていたこの時期、国内企業の業務IT化も急速に進んでいた。そんな中、当社初となる自社ホームページを開設、これをスタートラインに当社の全社的なIT化への対応が始まった。平成12年には社内LANを構築、OGUSU-SERVERと名付けられたサーバーシステムは今でこそ当たり前であるファイルの共有や情報の一元化を可能とし、事務処理や生産管理、品質管理の効率向上に大きな効果を上げた。

ちなみにIT化における当社の特色は導入を決して急がないところにある。技術革新が激しい領域だけに安易な発想で取り入れると失敗を招きかねないという理由であるが、こうした対応からも当社の堅実な企業経営体制が見て取れる。導入前に同業他社、他業種の実例、ツールの活用法、今後の開発の継続性などを十分に検討する。そのうえで間違いないと判断した後、導入を決定する。この堅実な企業姿勢はITに限らず、事業変化の大きな局面で十分に発揮されている。タイ進出然りであり、事前の検討が十分なだけ、決定後の行動は迅速果敢で他社の目を見張らせる実行力のみなもととなっている。

西工場が竣工し
生産体制が飛躍的に向上

平成不況と呼ばれたバブル崩壊後、日本経済はのちに「いざなみ景気」と呼ばれる第14循環景気回復へと向かっていった。景気回復の兆しは当社の受注量にも顕著にあらわれ、早急な設備対応といっそうの生産体制の効率化が求められていた。創業から業務拡大を続けてきた当社は工場の空きスペースへ次々と加工ラインを設置していった。時流にのり増産に対応したが製品の物流「1個流し」ができず、工程、納期管理が猥雑であるという弊害も生まれていた。そこで小楠金属の技術を活用した「付加価値の高い製品の一貫生産」を目的とし、西工場の建設に着手した。

平成10年に7000m2の工場用地を取得、同15年に西工場(2000m2)が竣工した。これにより南工場→熱処理→西工場(研削、検査)→出荷、という現在のムダのない製品の物流が確立され、農業機械部品特有の多品種少量生産に対応している。

2つのISOを取得し
社内の意識改革と組織力向上へ

近年、日本でもCSRという言葉が一般的になり、企業の組織活動に対する倫理性に関心がもたれている。利益を追求するだけではなく、組織活動が社会へ与える影響に責任を持つことが求められていた。ISOはマネジメントシステムの世界基準であり、環境面、品質面での事業活動を計るには十分な効果があった。当社では平成14年にISO14001、同15年にISO9001を取得している。ISOの運営には社内全体としての取り組みが求められるものでISO取得を契機に社内の意識改革は大きく前進した。
ISO9001は、のちに設立するオグスタイランドでも認証取得をし、タイ現地企業からの信頼獲得に貢献している。グローバルな事業展開をするうえで、ISOを取得している実績はこれからも重要な意味を持ってくる。

ISO登録証

株式会社 小楠金属工業所
70年の歩み

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  • 昭和21年~28年 ミシンの中釜から本格稼働。黎明期の小楠金属工業所。
  • 昭和29年~40年 モータリゼーションの発展にのり急激な拡大を見せる成長期のはじまり。
  • 昭和41年~50年 経営の優良性と進取の精神に裏打ちされ、引き続く成長のベクトル。
  • 昭和51年~60年 低成長期から景気の上り坂へ。社是・社訓を拠りどころに変化の時代に対応。
  • 昭和61年~平成8年 創業の精神に新たな意味を付け加え、21世紀へのさらなる飛躍を願う。
  • 平成8年~17年 いざなみ景気に後押しされた平成の成長期。将来を見据えた設備投資と新たな挑戦。
  • 平成18年~28年 篠原町から世界へ。小楠金属工業所は新たな飛躍のステージへ。

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